
秘密中毒
第5章 再会
次の日からあたしの頭は、ことあるごとに山田くんを思い出していた。
あたしにとって、それだけ大事件だったんだ。
高校の同級生が医者になって現れたこと――――
その同級生が、あたしの好きだった人、なこと――――
その好きだった人が、仕事とはいえあんなところを、見て、触ったこと――――――――
(………そんな再会って…あり得ないぐらい恥ずかしいんですけど!)
(ていうか今日もう木曜日なのにおんなじことばっか考えて…………)
「アヤさん、アヤさん」
「へっ??」
「ちょっと~大丈夫ですかぁ?」
隣で仕事していた桜が肩に手を置いて覗き込んでくる。
「なんで?…大丈夫だよ?」
平静を装って返事したけれど。
「急にため息ついてパソコンのキーボードに突っ伏しといて、その『大丈夫』は説得力ないよぉー!」
……あたしそんなことしてたんだ。
(はずかしい…………)
桜があたしを見て嬉しそうに言う。
「んもお、頬っぺた赤らめちゃって。もしかして、恋の悩みとか?」
「ち、ち、違います!第一あたし人妻だし!」
「うわあ……分かりやすく慌ててるよ!あの冷静なアヤさんが!」
桜はもう完全にあたしで楽しむことにしたようだ。
(だめだ…ここにも意地悪なのがいた)
あたしは席を立ち、ふらふらとトイレに向かった。
「おっ…と」
廊下の角で急に視界が暗くなる。
肩に柔らかい衝撃があり、見るとあたしの目の前にピンクのネクタイがあった。
