
秘密中毒
第6章 発覚
葛西くん、だいぶ酔ってるんだ。
ここはなんとか騒ぎにせずにこの場を切り抜けないと!
あたしまだ今の会社で楽しく働きたいもの――――
一瞬の間に目まぐるしく頭を働かせたわりに平凡な言葉が出てくる。
「葛西くん、痛いよ…離して?」
「イヤです。水谷さん、すごいカワイイっす」
「え、えーと!葛西くん酔っぱらって―――」
「水谷さんも僕のこと嫌いじゃないっしょ?」
普段は可愛いと感じる整った顔が、近づいてくる。
今は余裕と色気のある男の顔…
酔ってるせいか、遠慮なくあたしを見つめる目。
不意にあたしの頭に山田くんの顔が浮かんだ。
(ああ…そうか)
葛西くんて、高校時代の山田くんに少し似てるんだ。
そんなことに今まで気づかずに、ただ好みだって思ってた。
あたしはその顔を避けるように、下を向きながら言った。
「き、嫌いとか好きとか以前に、こういうのはダメでしょ?」
あたしがもがくと、両腕を掴んでいた彼の手がゆるんだ。
あたしは動かせるようになった手で彼の胸を押して離れようとした。
けれど今度は手首を掴まれて、ドアの隣の壁に身体ごと押しつけられる。
手は頭の上にあげさせられ、身体が密着して…さっきより無防備な格好になってしまう。
(どうしよ…大きい声出すしかないかな…?)
大きい声出すよって言おうとして、息を吸ったその時だった。
あたしの耳元に葛西くんが爆弾を落としたのは。
「川崎さんは良くて、僕はダメ…なんですか?」
卓也さんのことだ。
それはあたしの声帯と心臓を凍らせるには十分だった。
