秘密中毒
第7章 接近
けれど、あたしの身体はしっかりとした腕に抱き取られていた。
「あ…」
「…えらく熱いな」
耳のそばで彼が言う。
あたしは開いた白衣の胸に顔を押し当てた格好になってて、
かすかな医薬品の匂いと、彼の肌の香ばしいような匂いがした。
あたしの薄い部屋着の脇腹を支える手がひんやりとしていて。
(冷たくて気持ちいい…)
とかうっとりしてる場合じゃなかった!!
「ご、ごめんなさ……いっ!?」
あわてて離れようとしたあたしの身体が宙に浮いて、視界がぐるんと回る。
「わっやだ、降ろしてっ!」
お姫さま抱っこって!あ、あたし、重いのに…
身体をひねろうとするけれど、うまく力が入らない。
「部屋散らかってるし!お見舞いだからって勝手に、入らないでよ!ていうか降ろしてってば!」
あたしが文句を言い終わらないうちに、リビングのソファーに降ろされて。
「満足に歩けねえのに、口は元気だな」
むすっとした表情であたしから離れる、一週間ぶりのその人を見て。
熱が上がるんじゃないかと思うくらいに速まってしまった鼓動を自覚しながら、
あたしは不思議と懐かしさを感じていた。