秘密中毒
第7章 接近
「診察させろよ。俺にまた明日来いって言うのか?」
立ち上がった山田くんが上から見下ろしてそんなことを言う。
「今日の往診予定、なんとかこなしたからあとお前だけなんだよな。」
「でっでも杉本さんもいないし!」
「信用ないんだな。仕事はちゃんとするさ。カンジタの上に高熱出してる奴を襲う趣味はない。」
「ぐっ………もうっわかりました!」
襲われるとまでは思ってないし!ふたりきりは恥ずかしいだけで!
あたしは自分から寝室に向かった。
よろけそうな足をなんとか踏みしめて。
「なんだ、抱っこしてやろうと思ったのに」
山田くんがニヤニヤしてるのが、見なくてもわかる。
「結構ですっっ!」
…………
……………………
ジャージからスカートに履き替えてからショーツを脱ぎ、
ベッドに横になる。
ひとつひとつの動作がのろのろとしかできない。
熱のせいと、今からされることが頭にちらつくせいで…
(き、緊張する…何回やってもきっと慣れないな)
あたしがようやく覚悟を決めて、「どうぞ」と言うと
山田くんが入ってくる。
感情の読み取れない医師の顔をして。
「ちょっと我慢しろよ」
前と同じ、薄い手袋の指があたしの中に差し込まれる。
予想してたのに、それでも腰がビクンと跳ねてしまう。
おまけに―――
「ここもすげー熱いな」
なんて言うし。
「ちゃんと仕事するって言ったのに…っ」
「してるよ、指がね。異常なしだ」
山田くんの指があっけなく抜かれた。
ほっとした反面、拍子抜けした…っていうのが正直なところ。
なのに、「錠剤入れとくぞ」ってもう一度入ってくるから。
「んっ…」
気を抜いて変な声出しちゃった!
慌てるあたしを知ってか知らずか、山田くんは大して気にしない様子で奥まで入れた指を抜いて、「診察」を終えた。