
秘密中毒
第8章 恋慕
突然あたしは悟った。
あたし、山田くんが好きなんだ。昔好きだったからじゃなく。たぶん、初めてうちに来た時から。
胸が痛くて
居心地が悪くて
いつもの自分でいられなくて。
逃げ出したいほど恥ずかしいのに、1秒でも長く見ていたい。
相手に触れた瞬間、時が止まる――――――
それはとっくに忘れてた感覚だった。
卓也さんがくれる快感とは全然違う。
もっと激しくて苦くて甘い…………
「…どうしよう」
好きになってもどうしようもないのに。
あたしは自分の立場を思い出す。
結婚してて、セフレがいて、同僚にもあんなことして。
あたしに誰かを好きになる資格なんてない。
ましてや相手にしてもらえる可能性なんて。
…………
可能性なんて考えちゃいけないの。
独身の彼にあたしができることは何もないんだ。
好きって思えただけで、いい。
…………
その朝の数分間。
理性がつむぎ出すたくさんの言葉を聞きながら、
それでもあたしの心臓は痛みより甘さで痺れていた。
