
秘密中毒
第12章 告白
きのう―金曜日の午後。
いつものファミレスの駐車場。卓也さんの車の中で終わりを告げた時、
卓也さんは軽い調子で「いつかこういう日が来る気がしてたんだよな~」と言った。
そのあと頭を抱えて、「…でも実際来てみると、予想以上につらいな」とこぼした。
割り切ったつきあいなことは暗黙の了解だったけど、目の前で悲しむ卓也さんを見ると胸が痛んだ。
「俺さ、実はわりと、いやものすごくアヤちゃんが心の支えだった…」
なんて言う卓也さんは純粋で人間らしい、とあたしは思った。
都合のいい関係だったとしても、あたしのことを心ごと求めてくれていたのだ。
少なくとも、あたしよりは。
ついこのあいだまであなたに体の癒しを求めていたのに
他に抱きあう相手ができたからと、あなたを簡単に切り捨てるあたしよりは。
「ごめんなさい」
他に言うべきことがなかった。
いや、もう一つ。
体の癒しだけじゃない。
あたしこそ、卓也さんに心を癒されてた。
卓也さんに抱かれる間、あたしの頭は何も考えなくて良くて、あたしの心は安定してた。
「ありがとう。あたしも卓也さんにたくさん癒されてた」
卓也さんは顔を上げてあたしを見つめて
それからこう言った。
「アヤちゃん…! 今から2人っきりにならない?」
いつもの明るさで言う卓也さんに、あたしは笑ってもう一度「ごめんなさい」と言ったんだ。
…………
そう。あたしの中では、単に他の相手ができたという話ではなくて。
山田くんが現れたから、なんだ。
山田くんにとってあたしが何であろうと、あたしにとっては天地がひっくり返ることだったの。
だからもう卓也さんとは会えない。
卓也さんに逃げてる場合じゃないの。
それは、あの人にだって同じこと。
もう、逃げてはいられない。
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