『心の色』第6章「＜後悔の記憶2＞」　6ページ

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心の色

第6章＜後悔の記憶2＞

事件のことを知ったのは最初の影人間を、好奇心から追いかけたその翌朝だった。
その時、Aは普段通り新聞をひろげながら、妻の用意してくれた朝食をたべていた。
ふと、何か重要な単語を聞いた気がしてAはテレビに注意を向けた。
慌ててチャンネルを切り替えて違和感のもとを探す。ちりちりと、産毛が逆立っていた。
ニュース画面が映し出され、違和感の正体がすぐに分かった。
画面の中では沈痛な表情のレポーターがマイクを握っている。
「北品川で幼児が遺体で発見」左上のテロップには昨日の夜の陰人間を追いかけて下車した駅名が映されていた。
「ウソだウソだウソだ」Aはつぶやきながら、次々と画面を切り替えた。
画面に見覚えのある家が映し出され、Aは画面を食い入るように見入った。見覚えのある表札がほんの一瞬目にうつる。
画面がスタジオから、現場らしき場所の中継に切り替わる。「開けっぱなしの扉に、不審に思った管理人が警察を呼び、bちゃんの遺体を発見しました」　画面中央で興奮した面持ちのレポーターがマイクを握り締めて喋り続けた。
「警察は、bちゃんの母親のcさんがなんらかの事情を知っているとみて行方を探しています」レポーターがそう締めくくった。
Aの握りしめた拳の下で、新聞紙がしわくちゃにつぶれた。
レポーターの声が頭の中で再生され、「あの日、誓ったじゃないか」　同時に自分の声が聞こえた。「もう後悔はしないって」　
握りしめた拳に爪が食い込み、血がにじんだ。
次の瞬間、Aは少女に向かって突進し、わめき暴れるその子をはがいじめに押さえつけた。