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第3章 里親

整備されていない起伏の多い道を歩くこと2時間。
ようやく目的の街に着いた。
関所の役人とグレンさんが話している間、少し辺りを散策することにする。
孤児院のあった町とは違って、賑やかで活気がある。
商人の呼び込み、路を行く馬車、走り回る子供の声。鳥や野良犬がたまに見られた。
「おい」
いつの間にか後ろにいたグレンさんに関所前まで連れ戻され、何かの証書を受け取った。
「それを役所に出してこい。そこの角を左に曲がるだけだ」
え、一緒に来てくれたりはしないんですか。
一抹の不安を抱きつつ言われたように役所へ向かった。

「あのぉ、すいませ…ひゃあっ‼︎」
奥から突然出てきたのは女の人。ぼさぼさした金髪を頭の下の方で縛っている。細い香木をふかしていた。
口からぱっとそれを出すと、吸い殻入れに放り込んで、軽く笑った。
「何の用だ?買い物ならもうちょっと先の店でできるんだが」
なんで買い物だと思ったんだ、あんたは。
「えっと、隣の町から来たんですけど、えーっと…グレンさんって人にこれを渡されて」
「ん。……あれ、一人暮らしだろ、あいつ。どういう関係だよ」
どう説明したらいいんだろう。さすがに里親とか言ったら変な目で見られるだろうな。
狼狽えていると、女の人は訝しげな表情をして新しい香木を取り出した。
変な汗まで出てきた。慣れないことをしたせいで、不安定になってるんだ。
「あー…別に怪しいことするわけじゃ…なくて………やっぱり後で…?あ、出直しますっ」
「なんなんだお前…」




「はぁ⁉︎これ出すだけだろうが。んなこともできねぇのか」
「あなたの事どう説明したらいいか分からなかったんですよ! どういう関係なんだって聞かれて…」
というかよく考えたら『どういう関係』って聞き方も考えものだと思う。
なんだよそれ、とグレンさんがぼやくのを無視、ちょっと思い切って言ってみる事にした。
「じゃあついてきてくださいよ。自分のことは自分で説明してください」
「断る」
……。


帰りたい。

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