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第1章 孤児院

…。
…………………。

眠い。

起床鈴がひどく煩いせいで、何人かは施設長に文句を言いに行ったらしい。…何度言っても直さないのに。

ぞっとするような冷たい手が両足首を掴んだ。
「…アレク、おはよう」
足側から聞こえた細いだるそうな声。ラックだ。
返事をするのも面倒がっていると、また同じ声がした。
「…おはよう?」
何で疑問形なんだ、こいつは。
仕方なく重い体を引きずって方向転換し、ラックの方へ顔を向けて適当に返事を返す。 相変わらず眠そうだ。
「ねむい?」
軽く頷いた。実を言うと、頭を振り回したいくらいには眠気がするが。
「ところで。あれはなに?」
彼が指した方を見ると、例の光景が目に映った。
「お兄様‼︎起きて‼︎早く‼︎ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ‼︎‼︎」
「もうちょっと寝かせて…どこ触ってるのさ殺すよ」
最後の物騒な単語は無視する。
元は錬金術士の子供であるこの兄妹は手のつけようがないが、実質手遅れなのは妹のクーザだけだ。
兄のミツキはほぼ諦めていて、周りには『適当に流してもらっていいから』と虚ろな目をして語っている。
なんというか、もうこいつら(主にクーザ)はダメだと思う。
余談だが、兄は黒髪に赤い瞳をしている反面、妹は金髪青眼という『お前ら本当に兄妹か?』と問い質したくなるような見た目をしている。
いつもの兄妹喧嘩がそろそろ殺し合いに発展しかけてきた辺りで朝食の時間になった。
喧しい喧嘩の声を聞き、ふと思った。

これ、毎朝やってたら起床鈴の代わりになりそう。

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