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異形の男

第1章 1

4台のバイクは、1列にならび、弾丸のようにトンネルを走り抜け、ハイウェイにのりこんでいた。
すっかり日もくれ、夜空は雲がかかり星一つない。
最後尾についたバイクのライダー#4は、縛りつけた人質の頭越しに、背後を振り向いた。
背後の外灯がひとつ、またひとつと破裂するかのように一瞬で光を失っていく。
ハイウェイがゆっくりと闇に包まれていくのが見えた。
追跡してくるはずのパトカー1台も見えない。しかし、何者か、あるいは何かが彼らを執拗に追いかけてくる気配がはっきりとする。
(こんなのは聞いてないぜ)
一瞬にして、バイクのエンジンが動作を止めた。慌ててスロットルを吹かすが、死んだエンジンは生き返らない。
エンジンが止まった後も、バイクは慣性のまま進むがゆっくりと速度を落としていく。
前を走る仲間のバイクの姿があっという間に消えていった。
速度が弱まったバイクから、後ろ手に縛られた人質が飛び降りた。
いつのまにか、縛っていた紐をほどいていたらしい。
人質は大声で叫びながら、不自由な姿勢で走っていく。「たすけて!だれか たすけてくれ!」
横滑りをしてバイクを止めると、ライダー#4は体をひねり、腰から銃を引き抜きぬきざまに背後に構えた。
(何にせよ)とライダー#4は思った。(こいつをブチこんでやるさ)
次の瞬間、闇がまるで津波のようにライダー#4を飲み込んだ。
同時に何かが、彼の襟をつかむとバイクから引きずり落とした。
激しい衝撃とともに背中からアスファルトの地面にたたきつけられ、呼吸がとまる。
銃が手から落ちてどこかへ転がっていった。
バイクが横倒しに転倒し、路面との摩擦で火花を散らすのが見えた。
頭を押さえ、上体を起こしたライダー#4の目に、漆黒の巨大なバイクに極端な前傾姿勢でまたがった男が遠ざかっていくのが見えた。
その背中からは、闇夜のようなマントが広がり、まるで巨大な蝙蝠の羽根のように風になびいていた。

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