
君が書く手紙
第2章 ドナーを探して
帰り道はずっとその話をしていた。
祐輔が見たっていう、そのテレビでの体験談。
性格や生活習慣まで変わってしまった人の話。
殺人鬼の心臓を移植した人が殺人を犯した話。
冷血だった人が移植をして心優しくなった人。
話を聞くうちに、私は不安で不安でたまらなかった。
じゃあ私は?
移植をしてから3週間。
何ら変わりはないと思っていた。
だけど一つだけ・・・。
トクン、と鳴るあの違和感を感じた鼓動。
じゃああれは、提供者の魂?
そう考えれば、さっきの涙だって納得がいく。
だけど怖いよ。
それじゃあ、いつか私は私ではなくなってしまうの?
家に着いてこのことをお母さんたちに話した。
お母さんは驚いた様子だったけど、お父さんは静かに私の話を聞いていた。
「祐輔の言う通りかもしれないな」
お父さんがそうぽつりと言った。
「父さんも提供してくれたご家族に会わせてもらえないか頼んだんだが、取り合ってはもらえなかった。やはり、ルールというものがあるんだろうな」
「でも私・・・」
「ん?どうした?麻里」
「私・・・」
トクン、
その時、迷う私に応えるように、その鼓動は鳴った。
小さく、小さく。
「私、ドナーの家族に会いたい」
