君が書く手紙
第2章 ドナーを探して
松本翔太くん。
翔太くんは美容師を目指して頑張る専門学生だったと話してくれた。
優しくて、正義感の強い、友達からも慕われる人柄だったらしい。
20歳の誕生日を迎えて5日が過ぎた日、翔太くんは交通事故に遭った。
脳死ー
まるで眠っているよう。
心臓はトクトク動いているのに、
目ざめることはない。
髭が生えたり、背が伸びたりするのに、
目ざめることはない。
脳死は人の死と認められるのか?
だって心臓は動いてるんだよ?
それなのに死んじゃったことになるの?
脳死ってなに?
なんで死んじゃうの?
私の脳は元気だよ?
心臓は元気じゃなかった。
翔太くんの心臓は元気だよ?
脳が、元気じゃなかっただけなのに。
トクン―
不思議な鼓動がまた鳴り響いた。
そっか。
これはあなたの〝声”なんだね。
この家に帰ってきたことが嬉しいのかな?
なんで来るんだって、怒ってるのかな?
お母さんや妹さんに何かを伝えたくて、叫んでいるのかな?
気づくと私は声も上げずに泣き出していた。