君が書く手紙
第2章 ドナーを探して
「麻里ちゃん、〝私なんか”なんて言っちゃいけないわよ。特に私たちの前ではね」
「え・・・」
「あなたが自分のことを〝私なんか”なんて無下な言葉で表していちゃあ、翔太も浮かばれないわよ」
翔太・・・。
翔太?
「翔太さん・・・っていうんですか?」
「ええ。松本翔太。私の実の息子です」
松本翔太。
この人の、息子さん。
じゃあ、あの子は?
「あの、外で会った小さい女の子は・・・」
「あの子は叶恵。翔太の妹です」
叶恵?
どこかで聞いたことあるような・・・。
―叶恵、ごめんな
「あ・・・・」
夢の中の・・・女の人の名前。
じゃああの時夢の中に立っていたのは・・・・翔太って人?
「翔太はね、最近20歳になったばかりなの。あなたと同い年よ。大人になったって、はしゃいでいたわ。それであの子、いつの間にかドナー登録なんかしちゃって・・・」
遠い目でそう話し出したお母さまは、目に涙を浮かべていた。
その時ようやくわかったの。
ああ、私の言い方は失敗だったって。
実の息子が亡くなって、見ず知らずの女の子が元気に生きている。
死ぬのは私のはずだったのに・・・。
そんな女の子が目の前にいるなんて、どんな気持ちなんだろう。
私だったら、耐えられない。
複雑な思いでいっぱいになるはずだから。