君が書く手紙
第1章 新しい私
「こんにちは、麻里ちゃん。調子はどうかな?」
先生の明るい声がした。
振り返ると、眼鏡をかけた男の先生が、手術着を着て立っていた。
「先生。こんにちは。ばっちりよ!」
「そうかい。それは良かった。今日は頑張ろうな?」
「うん!先生もしっかりお願いね」
「あはは。任せて。もちろんそのつもりだからね」
ベッドに横になって、ガラガラと音を立てて移動する。
手術室独特の匂いが鼻をつんとさした。
「お名前を教えてください」
「坂口麻里、19歳です」
自分の名前を言うのは、本人確認のため。
手術をする患者さんを間違えないように。
もしも手術が失敗したら、私の最期の言葉はこんな自己紹介で終わるの。
そう考えるとなんだかあっけない。
だけど私は信じてる。
私は手術に成功するわ。
だって、何度もお願いした。
月夜の星に、何度も強くお願いした。
どうか私の病気が治りますように。
どうか手術が成功しますように。
どうか、生きていられますように。