君が書く手紙
第1章 新しい私
病室の廊下は、冷たい。
ひんやりとしていて、どこまでもどこまでも長い。
私が元気になったらやりたいことの一つ。
この長い廊下を、一気に駆け抜けること。
冷たい廊下は、通るたびにいつも嫌気がさしてたまらなかった。
だって今までに何人も見てきた。
発作が起こって、苦しそうにしてて
先生を呼んでしばらくすると、そのまま亡くなってしまう人。
家族だけが病室に残って泣き崩れている姿。
そんなシーンを、何度も見た。
そのたびに私は、聞こえてくるの。
死んでしまった患者さんの声かな?
ご遺族の方の心の声かな?
それとも、私に忍び寄る悪魔の声かな・・・。
―次はお前の番だ―
って。
ぞくっとして、その場を逃げ出したい気持ちでいっぱいなのに、
私はいつも、ゆっくり歩いて遠ざかるしかなかった。
だからね、一気に駆け抜けたいの。
そんな冷たいイメージを、取っ払いたくて。
そんな悲しい場面を見たくなくて。
悪魔の声を、聴きたくなくて。