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僕と私の、再初恋。

第3章 カコノキオク1

「真美はさ、稜ちゃんの事好きなんでしょ?どこが好きなの?教えてー」
すると、真美が衝撃のひと言を言い出した。
「は?好きなわけないじゃん」
え?サーっと血の気が引くのを感じた。何かの聞き間違い?身体が熱くなる。
「興味ないの。あんな男。1人で居て、かわいそうだったから相手してあげただけ。どうも思ってないの」
「うっそ。冗談でしょ?だって一緒にいる時間長いし」
真美が鼻を鳴らすのが聞こえる。
「私ね、翔平と付き合ってるの。高校の頃から」
翔平…?僕の知り合いにも翔平って男子がいるけど。
「翔平って…。まさか高山くん?」
「うん、そうだよ?私たちラブラブなの。でね、翔平が栗山がかわいそうだから相手してやれって言うから、栗山の相手をしてたの。みんな勘違いし過ぎ。あ、電話」
高山翔平。僕の高校の同級生で、ずっと仲良くしていた男子。まさか、僕の知ってる翔平?嘘だ。

嘘だー。

僕は翔平に見下され。真美にはただ単に同情気分で相手にされ。そうか。そうだったのか。
「もしもし〜?翔平〜?…あ」
電話で講義室から出てきた真美が僕が立っていたのに気づいて、なんとも言えない表情をしている。
悲しい?気まずい?それとも電話…同情の籠った表情?
なんにしても、僕の目には何も映らなかった。
そうか。僕は。友達と思っていた人間に見下され、彼女と思ってた女の子に遊ばれていただけなのか。
裏切り。全てがフラッシュバックする。発狂しそうになるのを辛うじて抑えて、僕は真美に背中を向けて歩き出した。
「あ、ちょっと…待って!」
真美が慌てて声をかけてくる。
「…なに…」
自分でもびっくりするくらいに冷たい声だった。
1人で抱え込まないで?そう言われた一言。あの時、言おうとした言葉。
『俺たち、ずっと一緒に居ような』
馬鹿馬鹿しい。

その一件から、僕は人を好きになる事はない。誰とも付き合わないし、誰も信用しない。
ー裏切られるからー
そして、今に至る。
危うく発狂しそうになるのを堪えて、無理矢理笑顔を見せる。
「ごめんね、言い過ぎたね。だけどね…」
じっと見てくる遥香を見据えて、
「やっぱり関係ないから。なんの関係もない君に言っても仕方ないから。だからね、言うこともないんだよ。それにね」
「…なんですか?」
不安そうな遥香の顔。だけど、違うから。
「俺は大丈夫だよ。なんも今は悩みないから」

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