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僕と私の、再初恋。

第3章 カコノキオク1

そうだ。
僕は、彼女に話す意味などない。理由もない。
だって、関係ないから。それに、この子と彼氏彼女の関係になるつもりもない。僕は恋愛をしない。人を好きにならない。そう決めたんだから。
「…私は、知りたいんです。分かりたいんです。稜さんが心配だから。何か抱えてるんじゃないかって、あの発言で分かったんです。話したらスッキリすることもあるだろうし。1人で抱え込まないでください」
1人で抱え込まないで。このセリフ。どこかで聞いたことあった。

5年前ー

「どうしたの?なんか元気ないよ?」
「あのさ、真美はさ…。いや、なんでもない」
真美が僕の顔を覗き込んで、
「お腹でも痛い?」
「なんでそうなった!腹が痛かったら何かしらアクション起こしてるだろ!トイレ行くとかさ!」
「いや、態度に出さない人じゃん。お腹痛かったりとか、車に轢かれたりとか」
「さすがに車に轢かれたりとかしたら普通じゃいられない…」
「で?どうしたの?」
真美と付き合って3年。大学4年生として、多分いい青春をしてると思う。我ながら。
「なんでもないよ。大丈夫」

それから1週間後ー

「ね、何か悩みとかない?」
「なんで?」
ご飯食べてるときに箸を休めて言う真美。
「1週間前さ、なんか元気無かったから。気になってて。大丈夫かな?って」
本気で心配してくれている。すごい嬉しい。
「大丈夫。もう解決したから」
そう微笑むと、真美は
「ほんと?なら良かった!」
すごく嬉しそうに喜んでくれる。
だけど。本当は解決してなんかなかった。
いつまで続くのだろう。真美は僕のことを好きでいてくれるのだろうか。僕は時折すごい不安に駆られる。怖さと共に。
トラウマ。縛りつけられている過去。
一瞬蘇ってきて、打ち消すように頭を振る。
大丈夫。きっと、思い過ごしだから。
「何かあったら、1人で抱え込まないで、ちゃんと話してね?私は稜の彼女なんだから」
笑顔を見せてくれる。可愛いな、ってつくづく感じる。僕も笑顔で返した。
幸せー。僕がずっと欲しているもの。
掴んだのかな?そう思った。
ところがー。

更に1週間後。大学の講義室で。
「ねー、稜ちゃんとうまく行ってる?」
僕が講義室に入ろうとした時、ドアのすぐそばで真美とその友達2人が話しているのが聞こえてきて、僕は立ち止まった。
コイバナか。講義室に入らずに話を聞くことにする。

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