
刑事とBG
第1章 刑事とBG~前編~
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「お父さん、80歳のお誕生日おめでとうございます」
ソファーでくつろいでいる団蔵のもとに、息子の原黒聡(はらぐろさとし)が歩み寄る。
「おお、聡か。よく来たな。芳子(よしこ)さんはどうした」
「…。あっちで妹たちと話しているよ。ところでお父さん…」
そう言って聡は、団蔵にコソッと耳打ちした。
「――…なに、それは本当だろうな」
団蔵はニヤッと笑う。
「ええ、とびきりいいのを用意してます」
聡もニヤリと笑った。
それをそばで見ていた、団蔵の後妻の沙也加(さやか)が、眉間にシワを寄せる。
「あたしは部屋で休んでくるわ」
沙也加は不機嫌そうにその場を去った。
入れ替わりに、娘夫婦と聡の妻・芳子がやってきた。
「おめでとうございます」
「まだまだ長生きしてくださいね」
団蔵を囲んで、談笑する。
「じゃあ、ワシはちょっと部屋で休んでくる」
聡に連れられて、団蔵は2階の部屋に向かった。2階に寝室があるが、団蔵はそこを通り過ぎて客間に入って行った。
客間に入ると、すでに若い女がいた。
「じゃあ、お父さん、ごゆっくり」
聡は笑みを浮かべながら、扉を静かに閉めた。
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パーティーも中盤に差し掛かってきた頃…
「きゃあーーーー!!!!」
2階から甲高い悲鳴が聞こえた。
近くにいた祐司が何事かと駆け付ける。
開いた扉の先には…
真っ白なシーツを赤く染め上げ、ベッドの上でピクリとも動かなくなった団蔵がいた…。
