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琥珀荘の奇妙な住人達

第5章 Bad×World~渚's過去編~

「引っ掻いて悪かったな」

そう言い、俺はそいつの傷を舐めてやる。
血と砂が混じった物をぺっ、と出す。
そいつの傷を見ると、もう治りかかっていた。

「え?!き、傷が治ってる……スゲェ!!魔法みたい!!」

「魔法、ではねぇけども…」

不思議だな、俺のこの力が誰かに喜ばれるなんて…
___________
そして翌日、こいつはまた俺の所へ来た。
また来たのか、と言うも、俺は帰そうとはせずに、そいつと話をしていた。

「それにしてもさー、わんちゃんの毛ってカッコイイよな!」

「だから犬じゃねぇよ!?……ん?そうか?……俺は…」

ちらりとこいつを見る。こいつは銀色の髪で少々癖がある。

「俺は、お前みたいな毛の色が良かった…」

こいつみたいに銀色なら、仲間と同じになれて……一人でいなくて済んだのかな

「んー、そんなに銀色が良いのかー?あ、そうだ。」

そう言ってこいつは、ポケットから何かを取り出した

「……鈴?」

そう、それは赤いリボンが付いていた銀色の星の形をした鈴だった。

「流石に髪の毛はやれないけどさ、これ、あげるよ。」

そう言い、こいつはそれを差し出した。

「いいよ、こんな綺麗な物…」

「いいんだよ、思い出だと思って受け取って」

そう言い、無理やり足首に赤いリボンでそれを付けてきた。

「うわっ、えー……本当に良いのか?」

「あぁ、勿論!」

そう言い、そいつはぐっ、と親指を立てて微笑む

「っ……?」

(何だ、さっきの?一度だけ胸が鳴った…)

「どうしたの?」

俺を覗き込んでくる。コイツを見てたら…何でだ…?無性に胸が鳴る……鼓動が早くなっていく…

「いや、なんでもねぇよ……ありがとな。」

すると、遠くから声が聞こえた。

「おーい、まー君。どこー?」

「あ、母さんだ!…もう時間なんだな…」

するとそいつは少し暗く笑い、立ち上がる

「おい?時間ってどういう事だよ…?」

「僕ね、実はここの近くの村にあるおじいちゃんの家に、泊まりに来てただけなんだ。それでね、今日帰るんだ」

ドクンッ

「嘘だろ…。なら、もう居なくなるのか…?」

「うん…残念だなぁ、せっかく仲良くなれたのにね」

ドクンッ

「……っ」

「母さん、呼んでるから……もう行くね…?」

そう言い、ゆっくりと後ずさって行く。

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