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琥珀荘の奇妙な住人達

第5章 Bad×World~渚's過去編~

「あ、__か。さっきここらから狼の鳴き声が聞こえたんだが、見なかったか…?」

(あいつら、俺を仕留める気だな…銃を持ってやがる…)

「知らないよ?」

(?!……コイツ、何でかくまったんだ…?)

「本当か?お前も知っているだろ。赤い狼を。あの化け物、確かにここらに居るはずなんだが…」

そう言い、人間の一人がキョロキョロしながら此方に近づいてくる…

(逃げるか?いや、今動いたら確実にバレる…)

どうすれば、と思った瞬間に、あいつの声が聞こえた。

「あっ!!そういえば、あっちになんか居た気がする……さっきも、あっちから鳴き声聞こえたもん」

そう言い、あいつは俺の居る逆方向を指差した。

「本当か?!、よし、あっちを探すぞ!!」

そう言い、人間の大人達はそちらの森へと向かって消えていった。

「もう出てきていいよ」

俺はゆっくりと出てきて

「お前、怖くないのか…それに、俺の事分かってるはずなのに、どうして助ける」

すると、そいつは笑いながらこう言った

「だって、悪そうに見えないからね!!」

「なんだよ、それ……あ、お前、傷…」

さっき俺が引っ掻いた所、血と砂が混ざっていて、手当てして無いのだなとすぐに分かる

「手当て、してないのか?」

「あ、……忘れてた…」

「忘れてたって、お前な……」

ため息が出る。どうしてコイツは、自分の事を忘れて他人の事に夢中になれるんだ……?

(不思議な奴だ……)

ふっ、と自然に笑みがこぼれた
そして俺はその時は気がついていなかった。人間に…こいつに、心を開き始めていただなんて

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