Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第3章 受験の冬と、恋する乙女の聖なる日。
「だから、私お兄ちゃんの後輩になるの! 合格したんだよ、ほら!」
そう言って、顔の前に手紙を突きだした。
「近っ! あ…」
「お、お兄ちゃん…?」
「ホントだ…」
暫く黙ったかと思うと、いつも以上の笑顔で私の事を持ち上げた。
「うわっ! え、何!?」
「あゆ、おめでとう! 良かったな!!」
そう言いながら、ぐるぐると回り始めた。
「ちょっ…! 私重いよ! てか、目回るから!」
「全然重くないよ。 目は…回るな」
そう言って、私を下した。
…毎週日曜日の、限られた時間にしか会えないお兄ちゃん。
さっき抱き上げられた時、こんなに腕の力が付いているとは思わなかった。
…って事は、剛典も高校生になったら変わっちゃうのかな…?
そんな事を考えていると、階段を上がる音が聞こえてきた。
「あーちゃん? 何やってるの?」
兄の部屋を覗き、私を見つけるとそう聞いてきた母。
「ママ…! 私、受かったよ!」
そう言うと、私の所に来て抱き締めた。
「ママ…?」
「おめでとう。 あーちゃん、頑張ってたもんね」
「有難う…」
そう言って、ママの背中に手を回した。
「さや、あーちゃんの事宜しくね。」
「分かってる」
そう言って、お兄ちゃんは笑った。