Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第3章 受験の冬と、恋する乙女の聖なる日。
でも、今度は少し寂しそうな顔になった。
「…やっぱり母さんは、父さんについて行くの?」
お兄ちゃんの少し心配そうな声に、ママは明るく答えた。
「当たり前じゃない。 パパを1人に出来ないでしょ? それに、あーちゃんにはさやが付いているから大丈夫でしょ?」
ママ…、行っちゃうんだ…。
「そうか。 …あゆの事は、俺が守る。 だから、母さんも父さんの事…」
「大丈夫よ! …そう言えば、あーちゃんの制服の採寸っていつ?」
…そう言うのが抜けているのも、ママらしいな、なんて思った。
「今月の21日と、28日だって」
私が貰った手紙を読んで、そう答えたお兄ちゃん。
「じゃあ、21日でいい?」
「良いよ」
「後、持って行かなきゃいけない物とかはさやに聞いて準備しておいてね」
「分かった」
私が返事をすると、ママは部屋から出て行った。
そして、頭に何かが乗る感触がした。
振り向くと、お兄ちゃんが私の頭の上に手を置いて、笑顔で立っていた。
「お兄ちゃん…?」
「改めて、本当におめでとう。 俺は、あゆの事ずっと信じてたよ」
「…有難う」
そう言うと、私の頭を雑にぐしゃぐしゃ、って撫でた。