Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第4章 卒業式と、初恋。
「最後、歩風」
「はい」
俺のハンカチを握りしめながら立ち、話し始めた。
「えっと…。 1年間、有難うございました。 あまり皆と話せる事は無かったけど…。 楽しかったです。 色々思い出がありすぎて、とても一言ではまとめられません。 こんな私に話しかけてくれたり、仲良くしてくれて有難う。 …もしもこれから先、どこかで会ったりしたら、気軽に声を掛けて下さい。 その時は…、歩風ちゃんとか歩風とか、適当に呼んで下さい。 …長くなっちゃってごめんなさい。 有難う」
表面上は、どこか在り来たりな雰囲気だけど…。
だけど、歩風の事知ってるから。
クールに見られがちで、クラスメートには「歩風さん」って呼ばれる毎日。
そんな日々が寂しい、って俺に言って来ていたから。
…高校では、歩風が寂しくならないといいな。
「はい、じゃあ後解散! たまには顔出しに来いよ。 起立」
皆のガラガラという椅子を引く音。
「じゃあ、歩風! 女子学級委員として、最後の挨拶!」
指された歩風は一瞬戸惑っていたが、笑顔になった。
「…はい! 注目、さようなら!」
クラスではあまり見せない笑顔と元気な声に皆は吃驚していたみたいだったが、最後には笑顔で「さようなら!!」。
…きっと皆が、今までで一番の最高の笑顔で。