Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第5章 俺と、大きくなった君の存在。
「で、どうかしたんすか?」
「ああ。 歩風、来るはずなんだよ」
「えっ、歩ちゃん…ですか…?」
信じられない、とでも言いたそうな顔で柚が言った。
「ああ。 そろそろ来ても良いはずなんだけどなぁ…。 まあ、もうすぐ来ると思うから待っててよ」
「はい。 失礼します」
そう言って、俺達は先生のもとを離れた。
「歩ちゃん、来るんだ…!」
「そうみたいだね! 良かった…!」
安心している表情の柚と希緒は、料理を取りに後ろの方に行った。
…歩風、来るんだ…。
良かった…! やっと、会える…。
…と、そんな事を考えていた時だった。
ゆっくりと会場前方のドアが開き、背が少し小さめの女性が入ってきた。
髪はミルクティーみたいに明るい色で、上に結んでいる。
パーティーとかにピッタリな、華やかなヘアセット。
そんな髪に合う様な薄いピンクのミニドレスを着ている。
その女性は、先生の傍に行って少し話をすると、小さなステージに上がった。
そして、彼女がこちらを振り向いた瞬間、ハッとした。
だって…、彼女は…。
周りはザワザワしている中、その女性がマイクを持って話を始めた。