ツインテールの君
第2章 えろかわ。
「そうだわ」
「はい、……」
「今日は、クッキーを持ってきたの。良ろしければ、お仕事の合間に皆さんで召し上がって下さいな」
國佳とせりはの目の前に、赤いハートのシールで封のされた紙袋が現れた。
いかにも手作りらしい梱包だ。
國佳が紙袋を見つめていると、せりはが、あっ、と声を上げた。
「昨夜、社長のブログ見ました!それって白羽さんの手作りですよね?」
「えっ……白羽さんって……あの……?」
「白羽みく(しらはみく)さん!」
花井の引き締まった面様が、にわかに崩れて俯いた。
國佳は、件の女性を知っている。花井と同居しているみくは、一部の業界人らの間で有名だ。
「みくちゃんの……手作りよ……」
花井の同居人に恋焦がれる女子は、少なくない。
しかも、彼女が容姿端麗で手先は器用、極めつけに社交的な人柄が効をなして、学生時代さばかりモテていたというのも周知の事実だ。
せりはも花井の手前、大っぴらな態度はとれなかろうが、些か鼻息が荒い。
國佳は、この黒ロリィタの同僚が、みくのモデルを務めている雑誌を収集している事実を知っていた。