ツインテールの君
第2章 えろかわ。
「実は、秋に向けていくつかまたフェアを考案していて、悩んでいたことがあったの。みくちゃんが、そういう時は甘いものを食べて、力を抜いてみればどうかって……」
「それで作って下さったんですか。優しい恋人さんですね」
「つっ付き合っては、それは断じて!…──っ、あ……ごめんなさい」
「いえいえ……はい」
「とにかく、その、甘い匂いでいっぱいのキッチンで、みくちゃんのエプロン姿を見て、私もインスピレーションが戻ったわ。可愛らしいリボンの形のクッキー、お味だって美味しくて、ほっとした。だから是非、従業員の皆さんにもお裾分けしたくて……」
「──……」
花井の両手が、その膝の上でもじもじ動いていた。
國佳達と顔を合わせまいとしているような、花井の動揺ぶりは、彼女らしからぬほどのものだ。
もっとも國佳にしてみれば、花井とみくの間柄などどうでも良い。
手作りクッキー、甘い匂いのするキッチン、エプロン姿──…。
得も言われぬ情欲が、國佳に迫っていた。