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ツインテールの君

第3章 Decoration cake princess




 國佳は、せりはとクリスマスの宿泊オフ会の準備をしていた。


 昨年、二人は日頃の業務を離れたところで、温泉旅行にかこつけて、聖夜の女子会を催した。

 参加資格は、ロリィタファッションの女性であること。
 遠方で、しかも泊まりだ。定員は僅か四人に限定したにも関わらず、お茶会ありビンゴあり、せりはのヘアメイク体験企画ありという、アットホームな夜は大いに盛り上がった。


 そして今年も、二人揃ってクリスマスの予定が空いた。職場に休暇を要請し、再び企画を立てたのだ。


 かくて今、準備の追い込み中なのである。



「だけど、結局ビンゴは副賞も豪華よね。一等は一昨年と同じ『Fairieta Milk』のレア物、二等はせりはのテディベアのポーチに、三等はさっき仕上がったチョーカー、むしろそっちの方がレアかも」

「経費は同じでも、手間がグレードアップしたわね。國佳は、その絵、パソコンに送ってビンゴの台紙にするんでしょ?一昨年は雑貨屋のパーティーグッズのところで買ってきたものだったのに、それ、ゲーム中も盛り上がるわよー」

「すみれちゃんやアリスさんが特にね。可愛いっておだててくれるかも」

「あのお二方は本心でしょ」

「無類の可愛いもの好きだものね。……っと、時間がないのに作業作業」


 はたとして、國佳はペンをケント紙に戻した。

 シャープペンシルで描いておいた下書きを、慎重にペンでなぞっていく。


 玄関からチャイムの音が聞こえたのは、にわかのことだ。


「配達でーす」

「…………」

「──……」


 國佳は、せりはと顔を見合わせる。


 配達員の呼びかけは、とてもその職員を装った、不審者らしからぬ調子だ。それでも、こんな時間に荷物が届こうとは、考えもしなかった展開だ。


「ごめん、國佳」

「え?」

「この間、新しい魔術グッズを通販サイトで注文した時、間違えて國佳の住所を書いてしまったかも知れないわ」

「──……」


 何をどうすれば、そんな間違いを犯せるのだ。


 ともかく國佳は一端作業を中断して、腰を上げた。

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