
不透明な男
第6章 暖と冷
翔と一緒に家を出た。
アパートの外まで出ると、翔に向き直って礼を言う。
智「いろいろありがとね」
翔「いえ、それより本当に大丈夫ですか?」
智「だから固いんだって(笑)」
翔「いや、あ~、やっぱ酒入ってないと…」
智「まあ、どっちの翔くんもかっこいいけどね」
俺が体を斜めにして翔を見上げる様に覗き込むと、翔はドキッとする。
いつもそうだ。俺は知ってる。
翔「も、もう!からかわないで下さいよっ」
智「ふふ。コレも、ありがとね?」
俺は着ている服を摘まんで言う。
智「ちゃんと洗って返すから」
翔「あ、はい。いつでもいいので」
智「うん。じゃ、お仕事がんばって」
翔「はい。気を付けて帰って下さいね」
ありがと、いってらっしゃい。と翔に笑顔を向けて手を振る。
翔も、少し恥ずかしそうに俺に手を振り返した。
その時、俺は視線を感じていた。
その視線を振り払おうとタクシーを拾う。
俺は急いで松兄ぃのマンションに向かった。
