不透明な男
第7章 違和感
松兄ぃの家の近くまで来ると、さっきの視線はもう感じなかった。
タクシーで来たのだから当然の事なのだろうが、なぜか少し落ち着かなかった。
俺はブルッと身震いして、いそいそと家に入った。
何だったんだろうな…、さっきの。
なんか、背筋がゾクゾクする…。
昨夜たくさん汗をかいたせいで風邪でも引いたかな?とシャワーで温まろうとした。
しかし、どれだけ熱い湯を浴びても体の芯までは温まらなかった。
プルル…
智「松兄ぃ」
兄「お、やっと掛けてきたか」
智「そっち何時なの? 今大丈夫?」
俺は初めて松兄ぃに電話を掛けた。
兄「お前はそんなの気にしなくていい」
智「ふふ…ありがと」
兄「それよりどうした?何かあったか?」
智「いや、別になんも」
兄「ははっ、そうか」
智「うん」
兄「…寂しいのか?」
智「べつに?」
兄「そうか(笑)」
松兄ぃは優しい。
お前の事はよく知らないというくせに、何か見透かされている気がする。
俺は、松兄ぃの声を聞いて気持ちを落ち着けた。