
不透明な男
第8章 序章
少し腰を浮かせ、松兄ぃを引き抜く。
俺の中から、ドロッとした松兄ぃの放った熱が出てきた。
松兄ぃは素早くそれを受け止めると、俺をくるっとひっくり返し抱き締める。
智「ん、ふぅ…、ふ…」
息を切らせ、松兄ぃに抱き付く俺の頭を撫で、頬にちゅっとキスをする。
兄「ふふ、早く素直になってれば、そんなに疲れないものを」
智「うるさいな…。意地悪なんだよ、松兄ぃ…」
やっと素直になったと思ったらもうそれかと、松兄ぃは笑う。
智「なんでそんな冷静なんだよ。恥ずかしすぎる…」
兄「お前があんな顔するからだ」
智「…どんな顔だよ」
兄「可愛くて、綺麗で、エロすぎるんだ…。冷静でいられる訳あるか。」
ははっと笑う松兄ぃは、やっぱり大人だ。
松兄ぃだってイキそうなのを我慢してた筈なのに、凄く落ち着いていた様に思える。
兄「お前は分からないだろうが、お前は俺を煽るんだ。凄く妖艶な顔で誘ってくるんだ」
智「そ、そんなの…してない…」
兄「自覚が無いから、つい、虐めたくなるんだよ…」
なんだよそれ、ひでえとゴネる俺をソファーに大事に置く。
兄「ちょっと待ってろ。風呂用意するから」
松兄ぃはベッドルームから毛布を持ってくると俺を包み、バスルームへ消えて行った。
俺は暖かい毛布を纏いソファーに転がる。
松兄ぃの与えてくれた熱の余韻に浮かされ、まだ身体は熱かった。
松兄ぃは俺を温めてくれる。
少しSっ気がある気もするが、大事に、優しく温めてくれる。
だが、それももう終わりだ。
いつまでも甘えている訳にはいかない。
こんな事、松兄ぃにとっては嬉しい筈が無いんだ。
松兄ぃを傷つけて、俺は癒される。
俺は最低な奴だ。
兄「もう少しかかりそうだ」
そう言うと、テーブルにコーヒーを置いた。
智「ありがと…」
俺はニコッと笑うとコーヒーに手を伸ばす。
兄「…どうした?」
…なんですぐ分かるんだ。
少しは鈍くなれよ。
優しすぎて損するだろ…。
智「どうもしないよ。ちょっと眠くなっただけ(笑)」
兄「そうか…」
お願いだから
俺の嘘に騙されてくれよ…
