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不透明な男

第8章 序章


耳、首、肩、鎖骨、俺の身体の至るところを熱い唇で愛撫する。

大きな手は、俺の身体をまさぐる様に撫で回す。

その、緩やかで温かい刺激に身を捩ると、更なる刺激を与えるべく、湿った舌を俺の身体に這わせてくる。


智「んん…っ、は、ぁ」

兄「気持ちいいか…?」


暖かくて、心が解れる様で、すごく心地よかった。
その思いは、俺の唇から甘い吐息となって漏れていく。


智「あ…、あぁ…っ、はぁ…」

兄「素直なお前も凄く可愛い…」


こんな事でいいのか、いや、駄目だろうと俺は頭の中で思う。
どう考えても松兄ぃに対して酷な事をしていた。

頭では分かっているのに、俺の身体は熱を持ち、漏れ出る喘ぎは止まらなかった。


智「あ、あっ、松兄…ぃ」


松兄ぃの熱が俺を貫く。
優しく、激しく俺の中をかき混ぜる。
俺は、俺を思う松兄ぃの刺激と暖かさに翻弄され、いつの間にか涙が溢れていた。


兄「泣くんじゃない…」

智「んっ、んぅ…っ、ま、松に…、ごめ、ん…」

兄「謝るな…」

智「は、はぁっ、おれ、こんな…、酷い、事…っ」

兄「お前は何も悪くない」


優しく俺を抱き締めてくれる。
暖かい瞳で、少し困った様な顔をしながら、俺を包み込んでくれる。


智「あっ、あぁ…、あったかい…よ…」

兄「ふふ…、ならいいんだ…」


俺は松兄ぃの唇に吸い付くと、ぎゅっと腕に力を込めた。
もっと強く抱き締めて、離さないでと、心で思う。


兄「いつでも甘えてこい」


俺の心が通じたかの様に、松兄ぃは俺をしっかりと抱き締める。


智「ありがと…」


俺の頬に伝う涙を、松兄ぃの唇が拾う。

俺の頭を撫で、身体を抱き締め、松兄ぃの熱を俺の中の奥深くまで埋め込んでくる。


智「ん、んぅっ、は、はぁっ、あ、あ…っ、く…」


松兄ぃの熱を深部で受け止めた俺は、大きく震える様に達した。



この時俺は、罪悪感よりも、幸福を感じていた。






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