不透明な男
第9章 もうひとりの俺
あれから1週間が過ぎた。
俺は毎日、あの絵と封筒に入っていた写真を見比べていた。
その横には名刺とメモも置いた。
ぐるぐると脳を回転させる。
甦るあの時のフラッシュバック。
吐きそうな程の気持ちの悪い感情と恐怖。
それに伴う憎悪。
こんなにはっきりとこの写真の男に対して憎しみが込み上げているのに、只ひとつ、腑に落ちない事があった。
きっかけだ。
何がどうしてそうなったのか。
原因がある筈なんだ。
その、一番肝心だと思われるものが、どうしても分からなかった。
はぁ…、なんなんだよ一体…
頭が痛くなるばかりで何も先に進まない。
もやもやは募るばかりだった。
只、俺もそんな何も生まない状況を延々繰り返していた訳ではない。
思い出せないのなら探せばいい。
俺は、東山先生の元へ向かった。
智「せーんせ♪」
東「お、久し振りだな。どうした、何かあったか?」
相変わらずごちゃごちゃした部屋のくたびれたソファーに座って口を開く。
智「ん~いつの記憶かはわかんないんだけど、まだ先生のとこにあるのかなぁ?」
東「何が」
智「おれさ、ひょっとして携帯預けてる?」
東「おぉ…、よく分かったな」
ふふん、と俺は得意そうな顔をする。
智「や、なんか家に充電器とバッテリーがあったんだよね」
東「それで思い出したのか?」
智「一晩かかったけどね(笑)」
なんでこんなものがあるんだと俺は考えた。
やっぱ携帯あるんじゃねえかと部屋を漁ったが見つからなかった。
どれだけ考えても思い出せずにその日はふて寝を決め込む。
その翌朝、あっさりと思い出した。
あ、おれ、預けてんじゃねえか、と。