不透明な男
第10章 視線
そうだ、検査があるからちゃんとシャワーを浴びてきなさいと薄気味悪い医師に言われてたんだった。
と俺は思い出し、朝からシャワーを浴びていた。
あれからもほぼ毎日の様にBG業に勤しんでいた俺は、母親の検査があるからと今日は休みを貰っていた。
検査って何の検査だろ…
しかもあの医者だろ、気持ちわりぃなと思いながらもしっかりと体を洗った。
特に体調が悪い訳でも無く、進歩も見られない為に俺の定期検診は月二回になっていた。
だから、翔に会うのもあの夜以来久し振りだった。
翔「あれ…、大野さん?」
俺を見付けた翔が首を傾げながらコッチにやって来る。
翔「検診は来週の筈じゃ?」
智「あ、翔くん。や、なんかね?」
検査があるらしいと告げると更に翔は首を傾げた。
翔「誰ですかその医師…」
智「ん?んーーーー。…わかんない(笑)」
おかしいなぁ、そんな話は聞いてないんだけどなと呟く翔は遠くの看護師に呼ばれた。
智「忙しいんでしょ?早く行かなきゃ」
翔「あ、はい。じゃ、検査終わったら話聞かせて下さいね?」
智「うん。じゃ、また後でね」
翔は俺に頭を下げると小走りで去って行った。
なんだろ…
なんか、ヘンな感じがする……
検査の話に関して、何か嫌な感じがした。
何故翔は知らないのだろう?
俺の来る日は確実に知っているのに。
時間すらバッチリ押さえている筈の翔が知らないなんて事、あるのか?
…んでもまあ、普通だったな
この間の夜の事、きちんと忘れたみたいだ
それに関しては、良かったなと少し胸を撫で下ろしていた。