不透明な男
第2章 正体不明の男
なんだか俺は1週間程眠っていたらしい。
倒れていた俺を、通行人が見つけて救急車を呼んだらしい。
それで病院からこの男に連絡が来たようだ。
倒れた俺が唯一持っていた連絡先。
それはポケットの中でしわくちゃになったレシートに書きなぐられた電話番号だった。
病院に着いた男は看護師にてきぱきと指示を出し、政界の大物とかにしか使われないであろう部屋を、俺にあてがった。
智「なんでこんな高そうな部屋…。」
男「お前に不自由させる訳にいかないだろう?」
どうやらこの男は、俺の事をとても大切にしてくれているらしい。
いや…
だったらなんであんな…
意識の無い人間を襲うなんて
あんなのレイプみたいなもんだろ…
男は話を続ける。
倒れてはいたが、顔に擦り傷と身体に少しの打撲跡があっただけで大した怪我はなかったらしい。
特に命に別状も無いのに何故か俺は目を覚まさなかった。
それも1週間も。
男「それで、ようやく意識を取り戻したのが今日だ。」
病院からの電話で俺の意識が戻った事を知ると、男は一目散に病院に駆けつけた。
1週間も眠っていたのだから、さぞかし不安な思いを抱えているだろうと思い男は病室に駆け込んだ。
男『智!』
智『…え?』
しかしそこには、キョトンとした顔で男を見る俺がいた。