
不透明な男
第1章 記憶の無い男
ここには少なくとも3人いる筈だ。
「綺麗だ」と言った男と…甘い息を吐く男。
それに俺。この3人。
だけど何かが違う。
瞼は重くて開けられない、話したくても唇を開くことさえ煩わしい。
なのに…
俺の唇は自然と薄く開き、その隙間から吐息が漏れる。
「…ぁ…ふぁ…っ」
は…?
え どういうこと…
耳に生暖かい感触がする。背筋がゾクゾクする。
眉がしかむのが分かる。
「ん…ふ…っ…」
な、なんだ…
この感覚…
ジンジンと脳が痺れる。
俺の少し開いた口からは、浅く息をする呼吸音が聞こえる。
「あ…っ はぁっ…」
息があがる。
え
おれの息があがってるの?
なんで…
ここにはふたりしかいない。
甘い息を吐いているのは、俺らしい…。
