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不透明な男

第12章 惑乱



あれから数日は俺の家に二人が泊まり込んだ。

俺も考え方が少しずつ変わっていったものの、やはり夜になると魘される事が多かった。

大汗をかいてもがいたり、震えたり、ある時は錯乱したりと夜中に一緒に起きる二人は俺を宥めるのに大忙しだった。

そんな俺を毎晩しっかり抱き締め、大丈夫だ、お前のせいじゃないと優しく言い聞かせてくれた。

その甲斐もあってか、俺は少しずつ眠る時間が増えていった。




智「もう大丈夫だよ」

B「でもまだ」

智「そろそろ一人で寝れないと駄目じゃん。子供じゃないんだからさ」

A「子供みたいなモンだろうが」


どこがだよと、プリプリすると二人はニヤリと笑う。


A「まあ、アッチの方は立派だが。な」

B「確かにあの表情はガキにゃ出来ねえな…」

智「はあ?お前らほんとバカだな」


そんな事は言っても、全く手も出さずに完璧に俺のサポートをしてくれていたんだ。
ちょっとは誉めてやってもいいかなと、思ってしまう程だ。


智「てかさ」

A「ん?」

智「お前らみたいのが出入りしてるとおばちゃんが心配するんだよね」


ああ、あのオバサンかと、二人は納得した。


B「ぷっ、お、お前、すっごい可愛がられてんだな」

A「“貴方達!この子に悪い事したら只じゃおかないわよっ!”て、掴みかかってきたからな(笑)」

智「そ、おれ可愛がられてんの。お前らの顔怖いんだからもう来ないで」

B「しゃーねーな」


普段着の俺とスーツ姿の二人が一緒に部屋に入って行く所を見つかった。

気配を消したおばちゃんは、急に俺の前に立ちはだかってコイツらに掴みかかったんだ。


目を丸くしておばちゃんの剣幕を浴びていた二人がおかしくって、俺はおばちゃんの後ろで笑い出した。

そりゃもう大笑いだ。

おばちゃんは顔を鬼の様にしているし、二人はデカい体を折り曲げ訳も分からずおばちゃんに謝ってるし。

あんなに笑ったのはいつぶりだろう。



あんなに笑えたのも、この二人がいたからなんだろうな。






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