
不透明な男
第12章 惑乱
智「んぁ、もうっ、大丈夫だってば」
B「いいや、まだ油断ならねえ」
勤務時間も過ぎたというのに家に帰してくれない。
どうやら俺を一人にするのが不安らしかった。
智「帰って寝るだけだってば。明日もちゃんと来るよ」
A「メシはどうするんだ」
智「食べるよっ。言い忘れただけだろっ」
あげ足取るんじゃねえと、ギロッと睨む俺は車にポイッと放り込まれた。
A「どうせちゃんと食わないだろう?」
B「そんでまたウジウジ悩むんだろ?それ位分かるよ」
目を離した隙にこっそり死なれちゃたまんねえと、二人は言う。
智「死なないよ…」
A「…本当か?」
智「人を不幸にして、自分だけ生きてるのはおかしいと思うけど…」
B「ほらまた…」
智「でも、自ら死ぬ事はしない」
やっぱりおかしいとは思うんだ。
だけど、皆が守ってくれた。
それも事実だ。
自らを犠牲にしてまで守ってくれたのに、苦しいからと死ぬ事なんて許されないんだ。
分かっていた事なのに、俺はその凍り付くような冷たさに耐えられなかったんだ。
償うなんて綺麗事だ。
俺は、逃げたかっただけなんだ。
智「もう逃げないよ…」
A「そうだな…」
うんうんと、二人は頷いた。
智「てことで、おれ帰る」
B「残念だったな」
智「へ?」
A「さ、降りろ。もう着いたぞ」
智「えええ」
今度は店に押し込まれ、さあ食えほら食えとじゃんじゃん注文する。
智「も、食えない…」
B「んな事言ってるからチビなんだ」
智「うるせえっ」
A「食わないと心配になるだろう?今日も添い寝してやろうか?」
智「け、結構です…」
ちゃんとお断りしたのに、しっかり添い寝された。
真っ直ぐ家に送ってくれたから安心してたのに、有無を言わさずそのままドカドカと上がり込んできてあっと言う間にベッドを整えた。
その間にもうひとりは勝手にシャワーをしてるし、この部屋の主である筈の俺は置いてけぼりだった。
A「さ、照明消すぞ」
なんだかんだで3人ともシャワーを済ませ寝る準備は万端だった。
智「え、マジで泊まってくの」
誰も家に入れた事無いんだけどと、立ち竦む俺を嬉しそうにベッドに引き込む。
B「これでうなされても大丈夫だ」
心配してくれてたのか。
全く強引だな…
