
不透明な男
第13章 胸裏
さてと、そろそろコッチの真相も分からないといけないな。
いつまでもうやむやのままにしておけず、俺はどうやって話を切り出そうかと首を捻りながら家路に着く。
智「翔くん」
翔「…えっ」
俺を見つける前の翔の背後から声をかけた。
翔が潜んでいたこの場所からは、俺の部屋の窓が見える。
その場で声をかけられた翔は、明らかに驚いていた。
智「ご飯食べた?」
こんな所で何してるの?普通ならそう聞くだろう。
だけど俺は聞かなかった。
それどころか翔と待ち合わせでもしていたかの様に話し出す俺を、翔は固まったまま見てくる。
智「まだだったらメシ、行かない?」
俺は仕事帰りだ。
まだシャワーもしていなければ着替えてもいない。
全身黒ずくめの俺を見ても、翔は何も言わなかった。
智「聞いてる?おれ、腹減ったんだけど」
翔「あっ、ああ、はい…。僕も、お腹空きました…」
智「ふふっ、なんか緊張してる?顔、固いよ?」
さてここからだ。
この間は答えてくれなかった。
はぐらかされたんだ。
今夜はしっかり答えて貰うからな。
俺は少し意気込んで翔を見る。
未だ固まったままの翔に、下からチラッと見上げる様に視線を合わせた。
智「いこ?」
翔「ど、どこに」
智「おれ店分かんないから、翔くん決めてよ」
何か食べたいものありますか?と聞く翔に答える。
智「んーー、思いつかない…。 けど」
翔「けど?」
智「落ち着けるとこがいいな…」
食べたい物なんて無い。
だけどこれだけは譲れない。
落ち着いて話の出来るところ。
翔と話がしたいんだ。
ちゃんと、教えて欲しいんだ。
翔「おっ、落ち着けるとこっ!?」
智「え?うん」
ん?
おれ別に何もしてねえぞ?
なぜ赤い
智「翔くん?どうしたの?」
翔「おっ、落ち着けるとこ、落ち着けるとこ……っ」
智「…?」
よく分からないが、一生懸命探してくれているみたいだ。
翔の薦める店は外れが無いからな。
智「どんなとこかな。ふふっ、楽しみ…」
プルプルと震える手でスマホを耳に当てる。
予約を取っている様だった。
店の予約なんて手慣れているだろう翔は、何故かすっとんきょうな声で話した。
俺はそんな翔を、首を傾げながら見ていた。
