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不透明な男

第13章 胸裏






智「ふぅ…」

B「お前、本当に大丈夫なのか?社長に会う度にこれじゃ…」


冷や汗を流す俺を心配する。
いつもの様に仮眠室に連れて行かれ、少し休めと俺をベッドに促す。


智「大丈夫だよ…。そんな事より、そっちは?」

A「ああ、問題無い。順調に進んでる」

B「心配いらねえぞ」


ほんとかよ、とBの自信満々な顔に少し不安を覚えた。


A「ははっ、そんな不安そうな顔をするな。意外とちゃんとやってるぞ?」

B「その通りだ」

智「んじゃ、当日はいけそうなの?」

B「ああ、候補に入りそうだぞ?」

智「入りそうじゃ駄目だよ。ちゃんと入って」

B「なんだよ、そんなに俺がいいのか」


ニヤリと変な笑みを浮かべる。


智「じゃなくて…。お前、本当に分かってるの?」

A「変な事考えてるんじゃ無いだろうな?」

B「そっ、そんなの考えてねえよ!」

智「どうだか…」


じゃあ俺はそろそろ上がりだからと、Aが言う。


智「ごめんね、ありがと」

A「気にするな。それに、ちゃんと確認しないと信用出来ないタチなんでな」

B「ん、じゃ成瀬は俺が見とくよ」

智「よろしくね。いってらっしゃい」


おう、と一言返事をすると、Aは足早に部屋を出て行った。
来る日の為に、Aは最終確認とやらをしに行くらしい。


智「もう大丈夫だよ。少し休んだらおれも行くから、持ち場に戻って?」

B「だから強がるなって」


ぎゅっと俺の手を掴む。
震えがBに伝わる。


智「あ…、ふふ。なんなんだろうね、これ」

B「成瀬…」

智「いや、社長の前では震えてないよ? だけどさ、なんか、お前らの顔見たら、さ」

B「うん?」

智「気が緩んじゃうのかな。安心しちゃって。そんで急に震えてくるんだよね」

B「ははっ、可愛い事言うじゃねえか」


手を握っていたと思ったら、俺の頭をポンポンと撫で、それでも足らないのか、グイッと俺を引き寄せるとしっかりと抱き締める。


智「ちょ、だから、大丈夫だってば…」

B「まだ震えてるだろうが。じっとしてろ」


有無を言わさないその強引さに、俺は大人しく抱かれていた。



人の温もりは気持ちいい。



俺はその暖かさに自然と目を閉じ、きゅっとBにしがみつく。



コイツは既に、俺を安心させる術を心得ているんだ。




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