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不透明な男

第13章 胸裏



潤「なんだよ。じゃあ、もうひと押しだったのか…」

智「そうだね(笑)」


そんな事言っても、本当にはしないだろ?
お前はそういう奴だって分かってるよ。


潤「ん、じゃあもう一回」

智「それは駄目」


咄嗟に潤の顔の前に手を出す。
条件反射なのかな。
だけど潤は怒らないんだ。
だって、ふざけてるだけだって俺は知ってる。


智「潤、お前に会えて良かった」


なんだよと笑いながらベッドに転がる潤を見ていたら、つい口走ってしまった。


智「お前は優しくて、強いんだね」

潤「な、何急に…」

智「ふふっ、いつも思ってた事だよ」


俺にストレートに愛情をぶつけてくる。
そんな潤を、俺はいつもはぐらかしてばかりだった。


智「最近は、喧嘩もしなくなったみたいだし」

潤「うん…」


だから最後くらいは、俺もちゃんと言うか。


智「おれがいなくても、もう大丈夫だね」

潤「智…」

智「大好きだよ、潤。応援してる…」


そっと頬に手を伸ばして、ちゅっと軽くキスをする。
そして、俺はニコッと笑うんだ。
ありがとうと、俺の気持ちを伝えたかったんだ。


潤「俺も、智に会えて良かった。喧嘩をしなくなったのも、智が居たからだよ…」

智「違うでしょ。お前がちゃんとしてるからだよ。全部、自分の力だよ」

潤「そう、かな…?」

智「そうだよ。おれは、知ってるよ?」

潤「ふふっ、智はなんでも知ってるんだね」

智「当たり前でしょ…」


なんだかんだで俺はお前に救われてたんだ。

ストレートに愛情をぶつけてくるお前に、心が綻んだ。

だけど真面目で、勝手に俺に手を出さない事も分かってた。

だから俺は安心して、お前のキスで温まったんだ。


潤「ありがとう、智…」

智「先に言うな。おれの台詞だ(笑)」


ほらな、やっぱり寂しくなっちゃったじゃんか。
だから最後にキスとか、嫌だったんだよ。


智「潤、ありがと…」



やっと言えたな。

俺だってお前が大事だったんだ。


意味合いは違うかもしれないが、お前を好きな事に変わりはないんだ。


アッチでも喧嘩するんじゃないぞ?



お前のその顔、俺は結構好きなんだから。




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