
不透明な男
第13章 胸裏
智「さ、話して」
B「あ~、長くなるから、それはまた今度」
智「はぁ?んな事言って誤魔化す気…、っ」
あれ?
馬乗りになっているのは俺だったのに、くるっとひっくり返され形勢逆転されてしまった。
智「なに…」
B「それよりもっと大事な事があるぞ?」
智「へ?」
キョトンとする俺の両手を取ると、ベッドに押し付ける。
そのまま顔を近付け、そっと俺にキスをする。
智「ん…っ、な、何して」
B「大事だろう?当日俺が暴走したらどうすんだ」
智「はぁ?」
B「というか、お前最近ヤッてねえだろ」
俺の顎を掴み、じっと俺を見る。
B「取り敢えず出しとけ。じゃないと、アイツらに何されるか分かったモンじゃない」
智「え、ちょ…」
そんな溜まってちゃ抵抗出来るモンも出来やしねえ。
アイツらにいいようにされたく無いんだったらちゃんと出しとけ、と俺に言う。
智「ちょ、ちょちょちょ」
B「ほら、大人しくしろ」
智「や、ほんと、待っ」
俺の言葉を無視して首を舐める。
ゾクッと震えた身体が、ビクッと波打った。
B「いいか?アイツらはその日を楽しみにしてるんだ。社長を筆頭にな」
智「ん、うん」
B「そんな時に、ちょっと触っただけでプルプルと震えたらどうなる?」
智「ん、…っ」
B「更に喜ぶに決まってるだろう?だから、これはやっとかなきゃ駄目なんだよ」
いや、それはなんとなく分かるが。
でもなんだか騙されてる気がする。
智「や、でもおれは」
B「男を知らないふりしてるんだろ?分かってるよ」
智「だ、だったら」
B「安心しろ、最後までしねえよ。お前の溜まったモンを出してやるだけだ」
智「え…」
俺とヤリたい訳じゃ無いのか?
俺を気持ちよくさせるだけで、自分はいいと、そう言ってるのか?
B「ほら、力抜け」
ムードもへったくれも無いが、これはこれで、コイツなりの優しさなんだろうか。
なんだかんだで優しい瞳を俺に向け、大きな掌で俺の頭を撫でるんだ。
智「ん…」
ほら、俺だって抗えない。
お互い、好きとかそういう感情では無いんだろう。
だけど、俺を大切に思う気持ちは伝わる。
来る日に少し怯えていた俺は、素直にコイツに温もりを貰う事にしよう。
