不透明な男
第14章 終幕
智「あ、おばちゃん」
「あら、智くん。出掛けるの?」
おばちゃんにも言っとかなきゃ。
前、俺が帰ってこなかった時、凄く心配してたからな。
智「うん。おれね、引っ越すんだ」
「えっ?引っ越し?」
智「そうなの。転勤が急に決まっちゃって」
俺の顔を見て、ぱあっと輝いた表情が途端に曇った。
「そうなの?それは、寂しくなるわねえ…」
智「うん…。だからさ、もう会えなくなっちゃうから、おばちゃんにだけは挨拶しとこうと思って」
「ふふ、嬉しい事を言ってくれるわね」
智「いつもありがとね? 体、大事にしてね」
「ええ、智くんもね。可愛いから気をつけるんだよ?」
智「ふふっ、大丈夫だってば」
「もう、本当に心配なのよ 」
智「おばちゃんこそ井戸端会議、程々にしなきゃ駄目だよ。夜は寒いんだから風邪ひいちゃうよ?」
あら、見てたのかいやだねえと、ほっこりとする笑顔で俺を見送ってくれた。
前を向いて生きる。
その為に俺は、けじめをつけるんだ。
智「てことで泊めて♪」
B「だから来るなら来るで連絡位しろと」
智「なんで?」
B「留守だったらどうすんだよ」
智「いるじゃん」
B「だからそれはたまたまだろうが…っておい、話を聞けって」
おじゃしま~すと、話も聞かずに勝手に上がり込んだ。
そんな俺は、リビングのドアを開くとくるっと後ろを振り返り、Bを見た。
智「…何してたの?」
B「うっ、打ち合わせだよ」
智「裸で?」
リビングの奥のソファーに裸で転がるAを見つけた。
邪魔しちゃったか。
智「あ~、ちょっと買い物してくる。2時間後に戻るね♪」
A「いやいや待て」
いそいそと出掛けようとする俺を二人は引き留める。
そして、ちょこんとソファーに座らされ、言い訳を聞かされていた。
A「てな訳でシャワーを借りただけだ」
智「ふうん?」
B「おま、信じてないだろ」
智「べつにい?」
そんな必死にならなくてもいいのに。
ヤッてなかった所で、今から始めたかも分かんないだろ。
A「ふう、ま、いいか。なんか説明してるのが馬鹿らしくなってきた」
何故俺の顔を見て言う。
そんな呆れ顔される様な筋合いはねえぞ。
てかそんな事よりも、取り敢えず段取り確認しないとだな。