
不透明な男
第14章 終幕
A「で、ここで顔を押さえときたいから…、成瀬は嫌そうな顔で連行されろ」
智「この段階じゃ無理だよ。何処行くんだろうって顔なら出来るけど」
B「お得意のキョトン顔か」
なんだそれ、別に得意じゃねえしとか言ってる間もAは黙って考え込む。
A「それもそうだな…、じゃあ不安そうな顔しとけ。それ位なら大丈夫だろ」
智「うん」
A「で、カメラの方はどうなった?」
B「ああ、成瀬の言った通りだ」
万一撮り逃すと意味がないから、部屋にも仕掛けた方がいいんじゃないかと話していた。
だけどBはまだその部屋に入れないし、いつ仕掛けるんだ無理じゃねえかと二人は困っていた。
B「社長が、お前先に行って仕掛けてこいとさ」
智「ふふ、やっぱり」
A「そんな趣味まであったなんて、よく分かったな」
智「あ~だって、仕掛けられたからね」
A「あ?」
智「あれだよ。夫人の時」
B「あ~、マジか…」
なんだアイツ本当気持ち悪いなと、二人は憤慨した。
智「ま、でもこれでカメラの方は堂々と仕掛けられるし」
A「まさか自分の仕掛けたカメラが証拠品になるなんて、思っても無いだろうしな」
B「ははっ、いい気味だ」
二人はニヤニヤと悪い顔をする。
結局の所、いい奴なのか悪い奴なのか、掴み所の無いその顔に正体を暴きたくなってしまう。
だけどまあいいか。
悪い奴だった所で、コイツらはコイツらなんだ。
俺を心配し、苦しみを和らげてやろうと温もりを与えてくれる奴らなんだ。
どんな人間だろうと、その事実は変わらないんだ。
A「どうした?」
智「べつに?」
B「ふうん?」
さ、まだまだ確認する事があるんだから、ボーっとしてる場合じゃ無いぞと、気合いを入れられた。
