
不透明な男
第3章 自覚の無い男
それはそうと、と俺は男に聞かなきゃいけない事を思い出した。
智「ねぇホモおじさん。」
男「だ!だからそれ止めろって」
智「おれ、ホモおじさんのせいで恥ずかしい思いしたんだから。」
男「恥ずかしい思い?」
智「キスマーク。おれに何個つけたの?」
男「えっ」
朝、検温が終わった俺は、その次に来た看護師に身ぐるみを剥がされた。
その時、看護師が俺の内腿に紅い跡を見つけた。
智「ごまかしたけど、超恥ずかしかったんだから。」
男「おま、なんで内腿なんて見せる必要あるんだよ!」
智「だって、お体拭きましょうねぇ~って。」
男「んなもんしなくたって、お前の部屋にはシャワーがあるだろ!」
俺だって断った。
だけど看護師の方が一枚上手だった。
それで俺は、パンツ姿でベッドに張り付けられたのだった。
智「とにかく!ホモおじさんのせいで恥ずかしかったの!」
男「も~お前本当に気を付けろよ~。それに俺はホモおじさんじゃねえ。」
智「だって名前わかんないんだもん、しょーがねーじゃん。」
男「…にぃ、で、いいよ。」
男は深い溜め息を吐きながら諦めたように言う。
智「にぃ?」
兄「ん。兄と書いて、兄ぃ、な?」
智「おれの兄ぃさんだったの!?」
兄「いや、違う。」
智「あ、あ~良かった。違うのか。」
兄「俺と兄弟だとそんなに嫌か?」
智「や、だって、ホモのうえに近親相姦だよ?だったらあんたすげぇヤバイ奴じゃんか。」
兄「おい!」
そっちかよ、と男が項垂れる。
兄「俺の事、そう呼んでたんだよ。」
智「そうなの?」
兄「ん、正確には〇〇兄ぃだけどな?」
智「そこ教えてよ。」
兄「い・や・だ。」
意地でも名前は俺が思い出さなきゃいけないらしい。
めんどくさいホモおじさんだ…
