
不透明な男
第3章 自覚の無い男
それでは。と頭を下げると翔は病室を出て行った。
それからは昼飯だのシーツ交換だのと言い、看護師達が入れ替わり立ち替わり俺の病室にやって来た。
その女達は決まって俺に愛想を振り撒き、廊下に出ては、きゃあきゃあと騒いでいた。
と言うわけで、俺は大してゆっくりと考える事も出来ず昨日から何の進歩もないまま今に至っている。
男「お前は何処に行っても人気者だな。心配してた通りだよ。」
見舞いにやって来た昨日の男が言う。
智「なんのことだよ。」
男「前からそうだったよ。お前の周りはざわつくんだよ。」
智「はぁ?」
男「お前にはそんな気は無いと思うが、みんなお前に魅了されるんだ。」
男が言うには、俺は酷い奴らしい。
なんでも、俺の笑顔が狡いと男は言う。
男「お前は自覚が無いんだ。」
智「なんの…」
普通にしてるだけでもお前の姿形に見惚れる奴は多いのに、と男はひとつため息をつきながら俺に言う。
お前はとても魅力的なんだ、それに対して自覚が無いから男女問わず誰でも寄ってくるんだと、ゴキブリホイホイ状態だったと、男が話す。
智「ゴキブリホイホイ…」
男「本当それ。」
智「なんだろ…なんか、複雑…。」
男「ははっ。でも本当危なっかしいんだよ。良い奴だけじゃなく悪い奴も寄ってくるから。」
自覚を持たないお前は、天使の笑顔と悪魔の微笑みを無意識に使い分け、周りの者達を次々と落として行くんだと、男は続ける。
しかしそれに気付かないお前は無惨にもそいつ達を切り捨てて行くんだと、呆れたような顔をしながら俺に話した。
男「俺も被害者のひとりだ。」
智「おれ、ひどいね…」
まぁ切り捨てると言っても、期待してる奴に素っ気ない態度を取るという事位だから、そんなに気にするな。と男は言った。
