
不透明な男
第1章 記憶の無い男
男の顔を見た。
目が合った。
…え
だれだ…?
男は嬉しそうな、悲しそうな、なんともいえない表情で俺を見つめてくる。
「智…」
…はい?
だれ智って…
「なぁ いつもの悪ふざけだろ?
もう降参したから… だから… 嘘だって言えよ。」
…え、と。
なんの話ですか…
「わからないなんて嘘だろ? 本当は全部覚えてるんだろ?」
「あっ…」
話すか舐めるかどっちかにしろよ…
なんも言えねーだろそれじゃ
「なんとか言ってくれよ 智…」
だから…
おれの名前はそんなんじゃ…って
え?
は?
え おれ
だれだっけ?
