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不透明な男

第4章 探す男


和「なんかちょっと時間掛かりそうな事言ってたんで、ゆっくりしてって下さいよ。」

智「あ、そうなんだ?ありがと。」


ところで、とニノはさっきの話の続きを聞きたがった。


和「何も持って無かったんでしょ?家の鍵とか大丈夫だったの?」

智「あ、鍵は持ってた。でもなんの鍵か分かんないの」

和「は?」

智「そもそも家が分かんないしね(笑)」

和「え、自分の家も分かんないの?」

智「うん」

和「じゃあ何処に帰ろうとしてたんです?」


ああ、それはねと松兄ぃの事を話した。


和「その人…大丈夫なの?」

智「大丈夫って?」

和「アナタの周りにはいろんな人が寄って来るから…」

智「ああ、その人も同じ事言ってたな。」

和「悪い人に騙されてるんじゃないでしょうね?」


大丈夫だよ、悪い人には思えない。とニノに告げた。


和「はぁ、アナタはすぐ人を信用するんだから…」


ニノが溜め息をつく。


智「信じちゃだめなの?おれ、ニノの事信じたからココに居るんだけど。」

和「も、もう!そう言う事簡単に言わないの!」


俺にはいいけど、余所で言ったら駄目ですからねとニノに釘を刺された。


和「はあ、心配ですよ私は。」

智「なにが?」

和「出張中とはいえ、得体の知れない人の家に帰す事がですよ。」

智「んじゃ泊めてよ」

和「え」

智「なんかあの部屋、すんげー広くてさ。寂しくなっちゃうんだよね」

和「寂しいの?」

智「んー、でもいいや、やっぱ帰るね」

和「や、ちょっと」

智「タクシーそろそろかな…」

和「呼んでないよ、タクシーなんて…」



え?なんで呼んでないの?と俺は不思議そうな顔でニノを見た。







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