霧島さん
第7章 本当の君と、
「ハナ」
「……」
「ハーーナ」
「…………」
「ハナさーん」
真っ暗闇の中で、心なしか楽しそうな蛍の声が聞こえる。
今覆いかぶせている布団を取り払ってしまえば、暫くこの男の下から抜け出せないことはわかっている。
そんな自殺行為、自分からするなんて余程の覚悟がないと…。
「そうやって怯えるハナは可愛いけど、いい加減焦らされると俺も持たないんだけど…」
「…っ」
ギシッと、すぐ側でベッドが軋む。
ーーあの後、冷え切った蛍の体に驚愕して無理矢理お風呂に入れさせた分、焦らしたと言われても何も言えない。
「ハナ」
きっと今、彼は私の上に跨ってあの不敵な笑みを浮かべているんだろう。
こうやって私の反応を楽しんで、意地悪ばかりするのだ。
「シャワーから帰って来たら饅頭みたいに丸まって、まるで食べて欲しいって言ってるみたいだよ?」
「!!な、なんでそうなるの?!ポジティブすぎ…っ」
あ、しまった。
そう思った時には時すでに遅く、一瞬の緩みを見逃さなかった蛍は、ガバリと瞬時に私から布団を取り払った。
あ、あぁ…終わりだ。
「…ハナ、」
「お願い、何も言わないで」
こんなこと、一度だってしたことないのに。
「ダメ、逃げないで。もっと見せて」
「…っ、さ、寒い」