霧島さん
第8章 お付き合い
「実はこのアパートとは別に俺の部屋があるんだ。こことは離れているし、住宅街にあるから人目もある。セキュリティも申し分はないはず。…どうかな」
そんなの答えは1つしかない。
私は蛍の手を握り返し、強く頷いた。
彼と一緒に居られるのなら。
「ありがとう。凄く、嬉しい」
ふっと安心したような蛍に、私も微笑む。
蛍。きっと私は貴方が思っている以上に貴方が好きだよ。これからは、幸せをくれた分返したい。
「ハナ、眠い?」
訪れた睡魔に抗う事なく、うとうととした意識の中小さく頷く。
「無理させたもんね。ごめん。今日はゆっくり休もう。
ーーーおやすみ」
すっかり外は明るくなり、キラキラとした光と蛍の温かい体温に包まれながら、私はそのまま眠りについた。
ーーーーーーーーー…
その後、引っ越しはすぐに行われることになった。
大家さんは窓さえ直してくれればいいと言ってくれ、お互いの荷物も少なかったためすぐに片付いた。
そして、引っ越し当日。
「しかしまあ、あの真面目そうな兄ちゃん。あんなに厳重に鍵をしてるから何かと思ったら、まさか女の子が居たなんてなぁ」
「大家さん。すみませんがもし霧島さんに彼女のことを聞かれても何も言わないでいてくれませんか」
「それは勿論だ。監禁するなんて危ない奴にそんな事はしない。…だが、本当に警察に頼らなくて大丈夫なのかい?」
チラリ。蛍の後ろに隠れている私を心配そうな眼差しで見てくる大家さん。
大家さんとは初めて会ったけれど、強面な見た目とは裏腹に、とても良いおじさんだ。まだ他人が怖いという認識が強いから向かい合う事はできないけれど…。
「…はい。あまり大事にしては逆に危ない可能性があるので…。知り合いに警察の者がいるので裏で協力はしてもらいます」