霧島さん
第8章 お付き合い
AM6:16
まだ少し暗くはあるけれど、徐々に鳥の声が聞こえ出した頃。
私たちは2人揃ってベッドの上でぐったり寝転んでいた。
「……生きてる?」
と、低く掠れた声でそう言って、腕の中に閉じ込めている私に体重をかけてくる蛍。重い。
しかしそんな拘束を解く力もなく、力なく頷くことしかできない。
なんとか生きている。生きてはいるけれど。
「……」
「ごめん…声も出てないね…」
カスカスの声しか出ない私は、三途の川が見えるほど危ない場所にいた。
「ちょっと休んだらお風呂行こう」
コクリ、頷く。
すると、優しく頰を撫でられ顔を上げるように誘導される。顔を上げると、優しい顔をした蛍がいた。
「初めて会った時眼鏡かけてたから目が悪いのかなって思ってたけど、違うんだね」
「、」
ーーーあの伊達眼鏡は、先生から貰ったものだった。先生から貰ったことが嬉しくてずっとかけてたはずなのに、いつの間にかけることをしなくなってたんだった…、
「先生に染まってる部分に気づく度、嫉妬してたんだなって今なら思うよ」
目元を親指で撫でられ、
まるで寝物語を聞かせるような穏やかな声で話すから、心地が良い。
「ねえハナ。これからは俺が上書きしていってもいいかな」
そんな蛍の言葉がいまいちわからなくて、唇だけがえ?と開く。
カーテンの隙間から朝の柔らかい光が徐々に入り込んできて、蛍の綺麗な瞳が茶色く輝いた。
「ーー俺と、付き合ってほしい、です」